Curveハッキング事件からDeFiの課題と未来を考える

  • 2023/8/10 00:27
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「Curve」プロトコルのハッキング事件と、この事件を通して見えてきたDeFiの課題と未来について考察します。投資という側面でDeFiに接している方にとっては、今回の事件をきっかけにDeFiのあり方を再考することになったのではないでしょうか。

※本記事は、2023/8/2に公開されたBankless DAOのpodcast(Will DeFi Survive This?)を元に、内容を再構成し、記者の論考を加えて執筆しております。

Curveのハッキング事件についての詳細は、以下にご紹介するニュースレターで詳細な解説がされています。ご一読をお薦めします。

事件後、犯人より、盗んだ資金の一部返却がありました。

CoinDesk Japanのオピニオン記事は、DeFiおよび暗号資産に過度な期待をしたことへ内省を促すような内容であり、一読の価値があります。

暗号通貨の週半ばの出来事

今週、暗号通貨の世界ではたくさんのことが起こりました。
中でも注目すべきは、DeFi(分散型金融)、および「Curveプロトコル」というものです。
これらは一体何なのでしょうか?解説していきます。

DeFiとCurveプロトコル:それぞれの役割

DeFiとは「分散型金融」のことで、暗号通貨の世界で重要な役割を果たしています。
Curveプロトコルは、その中でも特に重要なプロジェクトの一つです。
Curveプロトコルは、特定の種類の暗号通貨(主として、ステーブルコイン同士の交換)を他の暗号通貨と交換するための場所を提供します。

ハッキングの発生とDefi市場の混乱

Photo by Florian Olivo on Unsplash

先日、Curveプロトコルがハッキングに見舞われました。
「Viper」という名前のプログラミング言語にバグが存在し、Curveプロトコルに悪影響を及ぼしました。
Curveプロトコルの中核を成すプログラム(スマートコントラクト)は、Viperで実装されていました。
攻撃者はバグを利用し、資金を引き出しました。
さらに、Curveプロトコル創設者であるMichael氏が持っていた大量のCurveプロトコルのトークン(CRV)を担保として借入をしていたため、清算リスクによってDeFi市場に混乱が生じました。

プロトコル間の対立

Michael氏が大量の清算リスクを抱えている問題に対して、各レンディングプロトコル(貸付を行うプロジェクト)はリスクを最小化するために借入金利を調整し、返済を促進する方法を探しています。
これは、それぞれのプロジェクトが自身の利益を保護しようとした結果とも言えます。

一個人のリスクがDefi市場全体に波及した

ここで重要なことは、Michael氏のような「個人」が大量の借入を行なっていることでDeFi市場全体が大きなリスクにさらされる可能性がある、ということです。
この問題がどれほど深刻で、市場全体にどんな影響を及ぼすか理解することは、DeFiに参加する上で非常に重要です。

オピニオン〜Web3の未来を再考する時

技術は毀損されてはいない

今回のハッキングの原因となったViperというプログラミング言語の脆弱性を指摘する声もありますが、そもそも言語の脆弱性はWeb3特有のものではありません。
完璧なソフトウェアなど存在しないのは、Web2の時代も同じです。
技術的な観点から、DeFiはもう終わったと断定するのは明らかに早計です。

DeFiの革新性を再認識する

DeFiの革命的な側面を再考してみましょう。

  • 従来中央集権的なシステムが必要だった金融取引が、DeFiの登場によって中央の人や組織を置かずとも個人と個人が直接取引できるようになった
  • 流動性プールを介した取引も個人間の取引と本質的に変わらず、取引相手が「どこの誰か」を知る必要がない

これはブロックチェーンやスマートコントラクトの技術があって初めて実現されるイノベーションです。

分散性と富の集中は共存する、という現実

とはいえ、技術が進化して個人同士の価値の流通がスムーズになったとしても、特定のグループや個人が富を独占する現状は変わりません。
今回Michael氏が大量に(総発行量の約半数)CRVトークンを保有していたことで生じたDefi市場の混乱により、現状が露わになりました。
今回の件を契機に、私たちは「Web3の非中央集権性に夢を見過ぎていたのではないか」という問いを突き付けられています。
そもそも「非中央集権」は私たちの理想を達成するための手段の一つであり、目的そのものではありません。

私たちは今、一つの節目に立たされています。

  • Web3にまつわる技術が持つ可能性
  • それに伴う課題やリスク

両方を真正面から受け入れ、Web3の未来を再考する時期に来ているのではないでしょうか。
私たちが目指す未来の姿を明確にし、Web3の技術でどのようにその未来を支えるのか、方向性を再設定することが求められています。

鈴木 康男記者/エンジニア

投稿者プロフィール

2021年にWeb3に関するテクノロジーの急伸に衝撃と強い興味関心を抱き、ブロックチェーンに関するエンジニアリングを独学で学ぶ。
コミュニティやハッカソンでのプロダクト開発や、Web3に関する発信活動も行う。

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