【WebXイベントレポート】期待感が先行したYuga Labs✖️経済産業省の対談

2023年7月25日のWebXで行われた本対談では、Yuga LabsのCEOであるDaniel Alegre氏と経済産業省の課長補佐である板垣和夏氏が、日本におけるクリエイターエコノミーの潜在力やブロックチェーンの生態系における政府の役割、そして日本でビジネスを成功させるための環境整備について議論した。

現地からレポートする。

登壇者紹介

Daniel Alegre – Yuga Labs CEO (※写真左)
板垣 和夏 – 経済産業省大臣官房Web3.0政策推進室 課長補佐(※写真右)

Yuga Labs公式サイト:https://yuga.com/
経済産業省Web3ホワイトペーパー:https://cryptojournal.jp/crypto/3203/

日本におけるクリエイターエコノミーの潜在力

ダニエル氏:4か月前にYuga LabsのCEOとして就任しました。つい最近です。それまではGoogleアジアのCEOとして日本で住んでこともあります。またそれ以前はCandy Crushなどを運営する世界最大級のゲーム企業のActivision Blizzardでの経験から、ソーシャルな要素が非常に重要になってきており、2つのことに気づきました。
一つは、アイデンティティ。プラットフォーム上でペルソナを構築しています。しかし、ペルソナを別のゲームプラットフォームへ移動するは難しかった。しかしWeb3ならペルソナをどこへでも持っていくことができます。同時に、インフルエンサーはゲーム産業に不可欠です。またインフルエンサーたちもゲーム経済圏参加したいと考えています。
そんな時、UGAの創設者たちに会いました。私は、ゲームがWeb3によってどのように変貌を遂げるかについて彼らに話をした。UGAは、NFTから移行し、NFTホルダーに新しい体験をもたらす、Web3における最強のコミュニティとしてスタートします。そのひとつがゲームです。素晴らしいコミュニティーのメンバーに会えて、とても興奮しています。
日本政府から見て、NFTのビジネスや業界をどのように見ていますか?

板垣氏:日本政府はWeb3に関する課題を解決しようとしているのではなく、日本でより良いビジネス環境を整備しようとしています。それは、NFTが多くのIPを抱える優良なゲームを擁する日本社会と相性が良いからです。また、私たちの前向きな姿勢のおかげで、優秀な人材を日本に誘致することができました。
個人的には、ダニエルが言ったように、クリエイター・エコノミーの創造や個人のエンパワーメントという観点から、Web3に可能性を見ています。
例えば、ある分野での創作活動に興味を持ったとして、プロジェクトに貢献することで、トークンをもらったり、金銭的なインセンティブを得ることができれば、長い目で見て、社会貢献することができる。
社会問題を解決するようなユースケースもたくさんあります。それは経済の自由化に貢献するでしょう。このようなユースケースは、政府や日本のエコシステムをより良いものにするために作られたものです。

Web3における政府の役割と環境づくり

ダニエル氏:世界中の政府を見たとき、私が会った日本政府の人々のように、Web3の領域と機会についてこれほど知識があることに深く感銘を受けています。
Boared Apeホルダーの多くは、ブランドの上にビジネスを構築しており、経済的な活力を生み出すことができるのは、本当にユニークなことです。
ゲームやインフルエンサーの話と少し似ていますが、ブロックチェーン上で文化を創造し、つなげる機会があるということは、NFTの保有者として、それがBoared Apeであれ暗号ポーカーであれ、個人がブランドにレバレッジをかけることができるということです。つまり、これはブランドを創造するソーシャルな方法なのです。コンテンツ・クリエイターとつながるソーシャルな方法であることは言うまでもありませんが、それを中心にビジネスを構築することもできます。
昨日原宿を歩き、日本市場に存在する信じられないほどの活気と創造性を目の当たりにしました。日本政府が考えていることは商業、創造、起業家精神の創造をどのようにサポートするかということで、正しいと考えています。

板垣氏:日本ではビジネスが成長できる環境を作ろうとしています。税制の問題、会計の問題、規制の問題、政策の問題などです。
多くの優秀な人材を日本に誘致し、日本でエンジニアを教育することも計画しています。
ダニエルが言ったように、Web3領域は日本が世界のハブになる可能性を秘めています。
私たちはこの分野で優れたリーダーになれるかもしれない。
労働市場として、或いはビジネスをする場所として日本をどう見ていますか?
また他の国と比べてどうでしょうか?あなたの視点についてもっと知りたいのです。

ダニエル氏:アジアで働いた経験から、そしてここ東京で生活した経験から、革新的な新コンセプトを生み出すことへのハングリー精神や、テクノロジーをうまく応用する能力には、改めて驚かされます。私が見てきた日本企業の最大の問題は、日本で成功した後にどうやって世界に輸出するかということです。Web3が可能にするのは、世界のコミュニティを1つにすることです。
Boared Apeを例に取ると、最も情熱的なコミュニティの1つが、香港に拠点を置いています。コミュニティ・リーダーである彼らが会場にいるのを見て、とても感謝しています。CEOであるYuga Labsの観点から重要なことは、ここで目にする創造性のレベルをどのように活用し、それを世界中のコミュニティで利用できるようにするかということです。それが、私たちのプラットフォームでゲームコンテンツを作りたいというアーティストであろうと、あるいはPFPをビジネスに活用し、それを販売したいというアーティストであろうと、私にとって本当にワクワクすることなのです。
なぜなら、それは素晴らしい創造性を活用し、つなげることを意味するからです。先ほども言いましたが、ブロックチェーン上で文化を創造し、世界レベルでつなげるということです。

グローバルマーケットへ打って出るためには

板垣氏:日本のプロジェクトがグローバルに打って出るのは簡単ではありません。ここの聴衆の中にはNFTにフォーカスして新しいことを創造し、グローバルに展開しようとしている人々に対して、グローバルにコミュニティをYuga Labsから共有できるアドバイスがあれば、是非お願いします。

ダニエル氏;Yuga Labsのミッションは、世界中のクリエイターに視聴者とプラットフォームを提供し、つながり、コミュニティを構築することです。外部から見ているとわかりにくいですが、Web3はそれを可能にします。これはIPとそのライセンスのあり方を根本的な見直好ことになります。通常のメディアは、自分のIPを持っていれば、それを独占的にライセンスします。
例えばあるキャラクターをライセンスする場合、そのキャラクターを使って人形を作ったり、アニメを作ったり、限定的なことしかできません。しかしNFTに載せると、そのIPを使って好きなことができる無制限のライセンスが与えられます。レストランチェーンを始めたり、ビール醸造会社を設立したり、販売したいTシャツを作ったりすることも可能です。

Web3は、グローバルなプラットフォームであるため、製品をグローバルに展開する機会も与えてくれます。コミュニティによって、IPを次のレベルへと増幅させることができるからです。
私が起業家にアドバイスしたいこととして、1つ目は、関連する技術を基本的に理解することです。
2つ目は、世界中のコミュニティ・メンバーとつながることです。そして、アイデアやインスピレーションを得て、このようなイベントに参加してみてください。そうすれば、コミュニティがいかに強力で、人々を成功に導くために協力的であるかに驚くでしょう。
昨晩、私たちのコミュニティの会合にイスラエルやパキスタン、韓国、台湾、シンガポールの人たちが来てくれて、一緒に何ができるか?どうすれば協力できるか?ソーシャルコラボレーションを次のレベルへと引き上げ、もはや国という枠を超えようとしている。
Web3はグローバルなプラットフォームであり、グローバルレベルで自分のクリエイティビティを発揮し、経済活動に参加できるのです。

詐欺対策と規制の整合性

板垣氏:クリエイターエコノミーのようなイノベーションを促進するという点では、多くの人がWeb3の可能性に同意していると思いますが、同時に、ポンジスキームのような投機的な行為や、広告との癒着について批判する人もいます。そのような批判や、政府の規制との整合性をどのように考えていますか?

ダニエル氏:とてもフェアな質問ですね。私たちYuga Labsをは長期的な視点で取り組んでいます。長期的な価値は、コミュニティメンバーにとって重要であることは明らかで、彼らはNFTを中心に構築されたビジネスに投資します。我々はそれをサポートしたい。
日本人は野球好きなので、野球に例えて言うなら、私たちはまだ最初のイニングにすら立っていないのです。
私たちにとって重要なのは、いかにしてコミュニティがつながりを維持し、コミュニティが最初のクリエイターのアイデアの上に構築し、ユニークな体験ができるようにするかということです。
それが、「Otherside」上のゲーム体験であれ、他のプラットフォームの他の体験であれ、Web3が真の相互運用の機会をもたらしてくれます。しかし、Web3領域で抱えている最大の問題は、接点を持つことがまだ非常に難しいということですが、一度体験したら、もう戻れないですよね。
NFTは一過性の流行りだとか、ただの高価なJPEGだという人たちは、NFTの所有権や、コミュニティやブランド構築の真の可能性について理解できていない。
しかし1990年台のインターネット黎明期の時も、最初インターネットにつなぐことは複雑で難しかった。それが簡単に繋がれるようになってから爆発的に広まった。
Web3が今抱えている課題は、Web3のコンテンツともっとグローバルに交流できるようにするにはどうしたらいいか、ということだと思います。まだ比較的ニッチな分野ですからね。
私たちはまだ表層的の部分に触れているに過ぎず、テクノロジーや技術革新によって、より簡単にできるようになるでしょう。経済、コミュニティ、社会的な可能性は無限です。
政府の視点から見て、より多くの人々がWeb3を実際に活用できるようにするためには、どのようにすればよいと思いますか?

Web3のマスアダプション

板垣氏:私は政府内部でWeb3について推進している立場ですが、政府高官や政治家などにWeb3について話すとき、Web3とは何か、どんなインパクトを与えるか、伝えるのは本当に難しいことです。というのも、彼らはどのサービスも触ったことがないし、他の人が使っているサービスを見たことすらないからです。
Web3のサービスが普及した後は、良い環境を作りがもっと簡単になると思います。
しかし同時に、ベンチャーキャピタルのようなアプローチも必要です。というのも、マスアダプションした後から国がその分野に参入するのでは遅いからです。ですから、事前にイノベーションを促進し、どんなインパクトをもたらすかを明確に理解する必要があります。
日本にはすでにいくつかの優れたユースケースがあります。そのようなユースケースが拡大し、経済や全体、あるいは一般の人々の生活(クリプト民だけでなく)に何らかの変化をもたらすことができれば、私たちにとって大きな一歩となるでしょう。例えば、山古志村のようなソーシャル・プロジェクトでもいいし、企業や産業でのユースケースでもいい。イノベーションを促進するためには、このようなステップが必要です。

ダニエル氏:インターネットの黎明期に、インターネットがどういうものなのかよく理解していない経営者たちにインスタント・メッセージを見せたことを思い出します。少しずつ体験を重ねていき、それが考え方を変革していった。Web3でも今まさに同じことが起きようとしています。
Web3普及の道を切り開くために、日本政府と築き上げるパートナーシップをとても楽しみにしています。
2年、3年、5年後にこのことを振り返って、Web3からどれだけのものが生まれ、どれだけの経済発展や社会とのつながりが生まれるか想像もできなかったと言うでしょう。
グローバルレベルでの文化構築は、Web3から生まれるのです。
コミュニティが築き続ける素晴らしいイノベーションを楽しみにしています。
本日はありがとうございました。

オピニオン

Yuga LabsはNFTにコミュニティ導入した実績からコミュニティを構築して、グローバルに人を繋げる重要性を訴え、日本政府はWeb3がもたらす未来への期待感を滲ませる内容でしたが、実際にWeb3の普及にはまだ道半ばであり、地道な活動が必要であることは言うまでもありません。
期待感が先行して、実際にはそこまで到達できていない現状があるため、中々具体的な内容には踏み込めない対談でしたが、Yuga Labs CEOが日本で講演した事実は、日本市場への期待感の表れと言えます。

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