日本特有の「絆NFT」「ガチホ文化」に関する分析と考察
1.日本のNFT業界の盛り上がり
民間有志の調査によりますと、日本人でNFTを売買したことがある人口は、1万人から2万人の間といわれています。日本人口のうち、わずか0.01%程度に過ぎません。
日本がグローバルなNFTマーケットの動きと必ずしも連動しないのは、日本人の多くが英語を話せないことが理由の1つです。
言語の障壁が大きいため、島国である日本の中で独自の文化を構成しているのです。
DeepL等の翻訳ツールを駆使してまでグローバルな情報を積極的に取りに行くプレイヤーは、ごく少数です。
誰がそんな面倒くさいコトやるんですか?という話です。
その少数派の中でも、更に、英語話者のプレイヤー達とコミュニケーションを取り合い、オーガニックな人間関係を構築することなどは、相当に難度の高いことであり、そこまでに達する日本人は稀。というかもはや変人でしょう。
私は2021年にNFTマーケットにジョインして以来、国際的なプレイヤー達との直接的なコミュニケーションをとってきました。
テキストコミュニケーションには膨大な時間がかかります。
ですので、いま申し上げたかったことは、
「島国の日本では、有史以来独自の文化的発達を遂げていて、この歴史的背景は、日本国民の精神性にも多大な影響を与えている。」
ということです。
今回、改めてお伝えする「絆NFT銘柄」「ガチホ文化」は、現在の日本のNFTマーケットを席巻している価値観のひとつです。
身近な者達との結束を意味する「絆」というコトバは、日本人が古来大切にしてきた概念なので、かなり強烈なパワーを持ちます。
日本には、家族、友人、ムラ、コミュニティ、古くは主従関係など、強い結びつきのある人間関係(絆)を重んじる精神性が備わっており、「絆を重んじること=善」という道徳観念が存在します。
「絆NFT銘柄」とは、NFTにより絆を可視化する試み……といえばカッコイイけれども、実際は、「古来からの価値観が乗っかっている”絆”を、NFTのマーケティングツールとして巧みに利用している」といった要素も強そう。
「NFTのガチホを求める文化」は、グローバル市場でも例が見られるが、こと日本においては特に広く浸透しており、一過性の現象ではなく、今後も常に一定の支持を集める価値観として市民権を得ることでしょう。
一方で、絆から生じる同調圧力への反発や、価値観の多様化が阻害されているという指摘もあり、問題視もされております。
今回は、日本で流行している「絆NFT」の概念と、その問題点について解説していきましょう。
2.日本特有文化「絆NFT」とは何か?
日本には「絆NFT銘柄」と呼ばれているNFTがいくつか存在します。
取引高等で日本でトップに君臨するCryptoNinja Partners(以下「CNP」という。)をはじめとして、Live Like A Cat(以下「LLAC」という。)等のプロジェクトのことを指して言われることが多いです。
▼CNP
2023年6月末時点での取引量は約12,724ETHです。取引数では国内1位と、最も売買されているプロジェクトです。(2023年4月末時点コントラクト移行を実施しているため、旧コントラクトと合算して計算。)
※参考サイト:
https://nftranking.jp/?period=alltime&sort_order=volume_desc&keyword=
▼LLAC ローンチから2日間でtotal volumeが700ETHを超え、フロア価格は4.69ETHまで上昇。運営側の施策によりリスト率が極端に低いことから、発売後からフロア価格が一気に上昇しました。 2023年6月末時点での取引量は、約1,872ETHで国内18位。取引数は国内169位。
絆NFTは、ポジティブな意味で語られることもあるが、皮肉を込めた意味で使われることも多い。
絆NFTとは何でしょうか? 端的に言うと、
「プロジェクトの運営側または運営関係者が、ホルダーに対してNFTを売らないように強要する文化を醸成し、コミュニティ全体の同調圧力その他でもってそれを推進しているプロジェクト。」
のことをいいます。(本稿ではそのように定義付けをします。)
このムーブメントを起こした仕掛け人は、言うまでもなくイケハヤ氏(@IHayato)というCrypto界隈のインフルエンサーです。彼は現在の日本のNFTスペースにおいて極めて強い影響力を持ちます。
彼がNFTスペースにおいて絶大な影響力を持っている理由は、2021年9月に彼自身がその影響力をもってNFTスペースに多くの日本人を動員したことに起因しています。
これら絆NFT銘柄の運営側は、あらゆる情報発信やコミュニケーションの機会を通じて、「NFTを売らずにガチホすること」をホルダー達に求めています。
絆NFTの価値観は、主に次のようなものです。
- ガチホが善であり、売る行為は悪である
- NFTを売る行為は、プロジェクトに対してリスペクトを欠く行為だ
- 格安mintは、プレゼントだ
- よって、頂いたプレゼントをすぐに転売する行為は悪だ
- 二次流通で買った人は善だ
- 初期に格安価格で大量にmintしたホルダーが売るのは、悪だ
- 初期に格安で大量にmintした投資家はモラル違反だ
- NFTを大切にしてくれる人(売らずにガチホする人)に、買って欲しい
- 格安で買ったNFTを、すぐに転売して自分の利益を確定するような人には、NFTを持って欲しくない
- ガチホする人を優遇する措置を、継続的にとる
- 「AL磨き」を行い、過去に絆NFT銘柄をすぐに転売した履歴のあるウォレットに対しては、ALの配付を行わない等の措置がとられる。AL磨きとは、ウォレットのいわゆるブラックリスト化です。AL磨きについては後述します。
- ALやその他のユーティリティをエサにしてガチホ率を高めるだけでなく、同調圧力に従わない者を排斥する動きを強めている。
- この文化に賛同できないのであれば、コミュニティから出ていけば良い。という運営姿勢を取る。
- ホルダー全員が売るのを我慢すればフロア価格が上がる。だからみんなで売らずに我慢し、結果としてフロア価格が上昇している。
このような価値観を共通理念として醸成しており、理念に共感しない人間をコミュニティから排斥することで、内部の結束をより一層強化していく構造にあります。
コミュニティメンバーで結束し、絆を深め、リスト率を下げることにより、NFTの価値を高めていこうというモチベーションです。
AL磨きとは
プロジェクトローンチ前に、運営側がALを付与するウォレットを厳しく選抜する行為のことをいいます。
LLACローンチの際には、マーケターを務めるイケハヤ氏(@IHayato)自らがAL配布先ウォレットを1つずつ視認して確認し、すぐに転売する可能性のあるウォレットをAL対象から外すなどしました。
イケハヤ氏は、ウォレット磨きを更に洗練していくと発言しており、彼の関わる様々なプロジェクトでは彼の磨き上げたウォレットリストを元にAL配布先が決定されます。
「絆を裏切る売り方」をした履歴のあるウォレットは「ブラックリスト」に登録され、二度とALが配布されることはなくなります。こうして、絆NFTは文字通り排他的コミュニティを形成していき、内部に対しては売り圧を減らすよう黙示的な強制力を働かせるのです。
XANA PENPENZや、TOL等、理念を同じくするプロジェクトを追う毎にAL磨きは洗練されていきます。
洗練された「ブラックリスト」は、今後あらゆる同種の理念を掲げるプロジェクトで流用されていくことになります。
そうなると、彼らが喧伝しているとおり、「一度過ちを犯した人はずっとハバにされる」という「裏切り者には報いを!」が、ブロックチェーン上で適用されることになるのです。
そうして、文字通りWeb3界隈では”分断”が進んでいき、ハバにされた者の一部は強烈なFOMO(取り残されることへの不安)に襲われ、不安が高じて怨嗟が生じる。 そのような負のサイクルが発生しているのが現状でしょう。
コミュニティのローカルルールは、運営が自由に設定してしかるべきものですが、狭いNFT業界で多数を占めている”大勢側”の所業である場合、良くも悪くも影響は絶大です。
取り残される側の不安や反発は必至で、現に少なからず反発を招いてもいるが、少数派の意見はWeb3の時代になろうと結局はかき消されるのが現実なのかもしれません。
それ故、この施策は、他方においては分断と怨嗟を助長しているともいえます。
ウォレットデザインとは
なお、「格好よくウォレットをデザインしよう」という考え方も浸透しており、取引履歴が消えないブロックチェーンの特性も、売らないことへの脅し文句としてしばしば使われています。
絆銘柄に関しても、
・絆を裏切るような動きをした履歴は、一生消えない。
・ウォレットは全部チェックしていて、リスト化して管理している。
・汚れたウォレットはごまかせない
等という旨を運営側から発信しており、これらは同調圧力を発生させるための材料として機能しています。
「ウォレットを綺麗に保つ」という美意識は、NFT界隈の文化として根付かされつつあります。
私は、これはナンセンスな考え方だと思っています。
この価値観が広まった先にはどのような未来がやってくると想像できるでしょうか。
人間は変わるモノですが、過去の過ちをもって敵と認定し、失敗を許容せずブラックリスト入りして社会からツマハジキにする。その過ち認定は各コミュニティの長の判断次第ということになります。
そのような恐怖政治を各コミュニティ単位で敷いた先には、FOMOと怨嗟が渦巻きます。
少なくとも、平和に慣れた日本人は蚊帳の外のまま世界では相変わらず戦争をしていることでしょう。
また、ウォレットデザインの思想に基づき作り上げられた「綺麗なウォレット」が、高値で転売されるなどの事象が起こるのも自明でしょう。ウォレットが売買される闇市場。 そのとき、”ウォレットをみればその人がわかる”という判断指標は、どう変化するのでしょうか?
明文化されない”空気”という暗黙のルール
日本人の間では、明文化されない黙示的な裏ルール(”空気”)を重んじ、その空気に従う文化が存在します。
日本人にとって重要なのは、明文化されたルールや契約だけではないのです。
コミュニティ全体の空気感により同調圧力がかかり行動が制限される現象が、絆NFT銘柄のコミュニティで発生しています。
絆NFT銘柄のいわゆる「ガチホ文化」を是とする価値観は、イケハヤ氏(@IHayato)を中心として広く展開されはじめたものですが、それに追従するようにして、NFTのガチホを是とするプロジェクトも多数出現しています。
それにより、価値観を同じくする「絆NFT文化圏」が形成されており、今や界隈における一大勢力となっているのです。
それらの文化圏に属するプロジェクトでは、プロジェクトオーナーや運営側から「ガチホ推奨」を明言することもありますが、多くの場合は、「明言を避けながら、ガチホを推奨する空気を醸成」することで、コミュニティ全体の価値観を「絆NFT化」させていくという手法が採られております。
また、ガチホ推奨とは明言しないものの、「NFTは、絆である」という価値観を名言するプロジェクトも存在します。
「ガチホを強要」しないのであれば、本稿で扱う「絆NFT」の定義からは外れます。
ですが、「NFTは絆の証である」という価値観は、ガチホを推奨する絆NFT銘柄と同等の意味を持ちます。
なぜなら、「NFT=絆」という価値観は、「NFTは、日本人にとって重んじるべき絆の証そのものである。簡単に手放したり、裏切ってはならない。」ということを暗に意味するからです。
これらのプロジェクトにおいて、運営側がガチホ強要を敢えて明言しないのは単に責任回避的動機に過ぎないのではないかと分析しています。実質的には、黙示的に空気を読んでガチホを求めている場合が少なく無いからです。
先に述べたとおり”空気”に縛られる文化があるため、必ずしも明示的なルール化が求められない点は、日本的特徴です。
ともあれ、日本国内のNFT界隈における発言力の強い者がFounderを務めているNFTプロジェクトのいくつかは、絆NFTの価値観に賛同し追随しています。それにより、絆NFT銘柄の価値観が日本のNFTマーケットの広範囲に広まりつつあります。
以上が、現在の日本のNFTマーケットにおける絆NFT銘柄の現状です。
補足説明
絆NFTの価値観が、イケハヤ氏(@IHayato)が直接関わっていないNFTプロジェクトに対しても多大な影響を与えている理由について、補足説明します。
各NFTプロジェクトの運営者にとって、イケハヤ氏と価値観を対立させることは、「絆NFT」の巨大なコミュニティを敵に回すことと同義となり、リスクが高い行為です。
価値観の違うコミュニティ同士でも支え合うことは理論上は可能ですが、こと日本においては、価値観の相違と人格的な嗜好を混同する傾向があり、「価値観が違う→嫌い→敵」という思考に陥りがちです。
よって、市場の多数派を占める絆NFT銘柄の価値観には、表面上だけでも賛同しておくほうが得である、というビジネスジャッジを下すケースも少なくないと考えられます。
弱小プロジェクトにとっては、様々なコラボレーションの機会を活用した新規顧客獲得やマーケットの拡大は、早急に解決しなければならない問題の課題ですし、何らかのトラブルが発生した際には他プロジェクトのコミュニティ同士で買い支えをして助け合うこともあります。
そのような現実的な諸課題を考慮したとき、運営者としては、強いコミュニティを擁する絆NFT銘柄に与するほうが”得策”と考えるのが自然です。
この現象について、出世のためにゴマすりをする企業のリーマン精神と本質的に大差無い、などとの批判もあるようです。
ちょっと批判が過ぎる気がしますが。 読者の皆様はどう思われるでしょう。
CNPに関する補足説明
CNPのFounderであるRoad氏による発信には「CNPはガチホを推奨するプロジェクトでは無い」という問答が確認できました。しかし、実状はCNPのマーケターであるイケハヤ氏(@IHayato)自身がガチホ文化を周知しているしていることから、CNPもガチホ推奨銘柄として広く認知されています。
この点につき、Road氏からは「イケハヤ氏とは細かく連携していないので把握していない。」旨の弁明がなされている。
しかし事実を総合的に判断すると、CNPは絆NFT銘柄(つまり運営がガチホを推奨している銘柄)と認識されており、ホルダーとしてはNFTを売却する際にストレスを感じざるを得ないでしょう。少なくとも、Road氏の言うように「気にせずガンガン売ろう!」という銘柄にはなっていないでしょう。
3. 絆NFTの文化が発生した経緯
絆NFT銘柄の代表格として扱われるLLACやCNPの共通点は、プロジェクトの運営にイケハヤ氏(@IHayato)が深く関与していることです。
2021年9月に彼がFounderを務めるプロジェクト「CryptoNinja NFT」をリリースして以降、彼は日本のNFTマーケットを牽引し続けており、絶大な影響力を誇示しています。
CryptoNinja NFTは、1 of 1の素体のキャラクターを1体ずつリストしてオーナーを増やし、コミュニティを成長させてきました。CNPはこのコミュニティから発生した二次創作的プロジェクトであり、ファウンダーはRoad氏です。
CNPは2022年5月にローンチされ、当時としてはまだ珍しかった格安mintのトレンドを作りました。
mint個数の上限は設けず、CryptoNinja NFTのホルダーやコントリビューター等に対してALが配付されました。
ローンチ後は右肩上がりにフロア価格を上昇させ、一時3.6ETHを超えました。 (※加筆:2023年6月現在、フロア価格0.58ETHまで下がってきています。)
当初は、運営側からのガチホを求める発言や、mint個数上限に関する言及はありませんでした。それまでのコミュニティ貢献者への還元施策の一環として、CryptoNinja NFTホルダー等から最優先でmint権が与えられたのでした。
しかし、CNPのフロアプライスがうなぎ登りに上昇していくに従い、イケハヤ氏ら運営は発信趣旨を巧妙に変化させていきました。先述したガチホを求める文化は、途中から運営側から突如として繰り返し周知徹底されるようになったものです。
また、イケハヤ氏ら運営側の意図を汲んだコミュニティメンバーやNFTホルダーらからの同調圧力が高まっていき、より内部の「絆」が高められていきました。
「買ったNFTを売ってはいけない」という契約は存在しません。
それにも関わらず、運営サイドで巧みにストーリーテリングし、絆・ガチホの文化を醸成しつつ、コミュニティメンバー達もそれを受け入れるよう顧客教育を断続的に施し、絆・ガチホ文化が強固に形成していった手腕は見事でした。
LLACについては初めからガチホを求めており、AL配布時にガチホしそうなウォレットを意図的に選別してAL付与し、転売しそうなウォレットを排除する「AL磨き」をイケハヤ氏自らが主導して行いました。過去にCNPを複数転売していたりするウォレットは徹底排除され、そのことを敢えて公に告知することで文化圏を強固にしていきました。
これにより、当該NFT文化圏においてはガチホしない人間を排斥する思想がより濃厚となっていったのでした。
LLACのファウンダーも独自のコミュニティ(フリーランスの学校)を持つインフルエンサーであり、界隈では強い発信力を持ちます。彼は、仏教の座禅などの概念を持ち出すなどして、「売らずに耐えて、ガチホすることが善である。」という価値観を発信し続けています。
LLACを売った者に対しては、彼の買い切り型のオンラインコミュニティであるフリーランスの学校からの脱退を勧告する事例も報告されています。価値観を違える者の排斥を徹底していく文化が、ここでも垣間見れます。
「イケハヤ仮想通貨ラボ(ICL)」についても色々とあるようですが、まぁとにかく徹底した文化圏の構築がなされているという構造がある、という説明に留めておきましょう。
このように、界隈で影響力の強いインフルエンサー達を中心に絆・ガチホNFTの価値観が継続的に強く奨励されているため、他の多くのNFTプロジェクトにも影響を与え、次第に日本のNFTスペースにおいて市民権を得るに至ったのです。
余談ですが、なにごとについても言えることですが、ご自分が見ている事実や見たい事実だけが真実ではありません。むしろ、見ていない事実や表に出てこない事柄の方が多く存在するのだと言うことも、忘れない方がよいでしょう。
4.論評:絆NFTの是非について
「絆NFT銘柄」の価値観については日本国内においても賛否両論があり、否定的意見の論旨は概ね次のとおり。
- 契約でもないのに、NFTを売らせないようにするのはおかしい
- 中央集権的であることへの批判
- 閉鎖的なコミュニティへの批判
- Cryptoの根幹思想に反しているとの批判
それぞれの批判は一理あるものの、一方で絆NFT銘柄の思想を悪と断ずることはできないと考えています。
「絆NFT銘柄」は、日本のNFTマーケットの盛り上がりと発展に一定の役割を果たし、貢献していることは事実で、いま挙げた批判はやや的を外しているように思います。
絆NFT銘柄に問題があるとすれば、
(1)排他的文化が分断を助長する
(2)NFTプロジェクトの多様性の欠如
(3)コミュニティメンバーの絆疲れ
これらを取り上げるべきだと考えます。
(1) 排他的文化が分断を助長する
「絆」と称する内部結束によりコミュニティパワーを高めることは結構だが、その弊害として、コミュニティが一層排他的になり”ムラ”化していくことについては懸念もあります。
まだ狭いNFT市場において、分断を助長する排他的思想や敵対的コミュニケーションは歓迎されるべきものではないように思います。ムラ化し自身の所属するコミュニティに対する愛情が育まれることはメリットですが、他方で排他的思想になりがちなので注意を要します。
黎明期のNFT市場では、一定の発言力を持つ中心的人物の人間性がそのまま界隈全体の雰囲気や治安に影響します。
私たちは、常に広くマクロな視点を持ち、異なる価値観に所属する人々をも尊重し合うコミュニティ文化を育む努力を怠ってはならないでしょう。自分の考えと違う人間を敵と断ずるのは、やや短絡的かもしれません。
私は海外のNFTの一線にいるプレイヤーと話す機会も多いですが、フランスの主要人物らと会合を重ねるうちに、狭いムラの中で敵対し合っている日本のコミュニティは、恥ずかしいと感じました。
(2) NFTプロジェクトの多様性の欠如
「絆NFT銘柄」の影響力が非常に強いため、寡占化それ自体が問題でしょう。
しかし、寡占化はマーケットの狭さとプレイヤーの未熟さが故であるため、絆NFT銘柄それ自体の存在を批判するのはお門違い。
絆NFT銘柄は、ガチホを是とする独自の価値観を強めて、コミュニティ独自の哲学として成長させ完成させていけば良いと思います。
ただし、コミュニティを結束するために、自コミュニティ以外の価値観を否定し、敵視し、抹殺しようとするという視座の低い言動は、先に述べたように多様性が阻害されるため業界全体の発展にとって望ましくないでしょう。
多様性の欠如それ自体に問題があるのですが、この問題の解決方法は、別の魅力あるNFT文化の台頭を待つほかにありません。
他のNFTプロジェクトのファウンダーや、今後ローンチを計画しているチャレンジャーは、安易に多数派思想に流されることなく、独自の哲学や価値観を大切にし、腰を据えて価値のあるプロジェクト・文化を醸成していっていただきたいと思います。
(3) コミュニティメンバーの絆疲れ
「絆疲れ」とは、実に皮肉な現象だと思います。
ガチホが強要される文化においては、コミュニティメンバーに対して必然的にプレッシャーがかかります。
コミュニティから「村八分」にされることへの恐れや同調圧力が次第にストレスとして蓄積されていき、精神的が徐々に疲れていきます。
これが、いわゆる絆疲れという現象です。
「絆」の重要性を運営が強く周知し、ガチホを強要する文化圏の中には、絆という概念の自己矛盾が存在するようにも見えます。
つまり、本来、絆とは自然に芽生えるものであって、作為的に作る物では無いはずです。
いま絆疲れを起こしている人がいても、どうか安心して頂けたらと思います。
仮に彼らのコミュニティを村八分にされたところで、あなたはWeb3からも、世界からも、爪弾きにされるわけでは決してありません。
今のNFT界隈は狭いので、絆NFT銘柄の価値観に背くと村八分にされて他に行き場がなくなるように感じてしまうかもしれません。
しかし、今後NFTプレイヤーの人口が増えてくれば、多様な価値観を持ったコミュニティ・文化圏がどんどん増えていきます。
だから、絶望するには早すぎるのです。
むしろ、骨のある人物を探す好機と捉えて喜びましょう。
また、グローバルなマーケットに目を向ければ、そこには多種多様な価値観が存在しており、グローバルなWeb3市場は、常に誰に対してもオープンです。
ですから、あなたの価値観にあった居心地の良いコミュニティや文化圏は今後きっと現れるので、長い視点でNFTと付き合うことが肝要だと思います。
自分の気持ちに嘘をつかず、常に自然体で向き合うように心がければ、不必要に疲弊することもなくなるでしょう。
NFTやWeb3界隈を俯瞰的に捉え、違う価値観を認め合い、リスペクトをし合う文化が育まれることを、切に願います。
ブロックチェーン、NFT、AI等の次世代テクノロジーの可能性を信じ、長期目線で楽しみましょう。
テクノロジーを有効利用して、あなたの人生をより豊かにする方法を一緒に考え、実践していきましょう。
※本記事は、有料マガジン週刊Time is Life(2023年3月26日号) に掲載された内容を再編集して掲載したものです。