Ledger Liveでイーサリアム(ETH)をステーキングする方法を解説
ステーキングは、ブロックチェーンのセキュリティとネットワークの安定性を支える重要なプロセスです。
Proof of Stake(PoS)メカニズムを採用するブロックチェーンでは、参加者がトークンをステークすることでブロック生成に貢献し、その対価として報酬を受け取ります。
しかし、このプロセスは技術的な知識や資金の要件が高く、多くのユーザーにとってはハードルが高いでしょう。
しかし、Ledgerを利用すれば、ユーザーは安全かつ簡単にステーキングに参加することができます。
この記事では、Ledgerでステーキングを行う利点、特にLido(ライド)などのイーサリアムのステーキング代行サービスを利用する際のメリットに焦点を当て、そのプロセスを詳細に説明します。
この記事を最後まで読んでいただくと、ステーキングに関する理解が得られ、実際にステーキングを行う方法を学ぶことができます。
ステーキングとは何か?
まず、ステーキングとはProof of Stake(PoS)を採用しているブロックチェーンにおいて、取引を記録するブロックを承認するためのプロセスの一つです。
トークンを保有するステーカーがバリデーターにトークンを委任し(もしくは自らがバリデーターになり)、そのトークンをロックすることでブロック生成のプロセスに参加し、その対価として報酬を受け取ります。
このとき得られる報酬が、いわゆるステーキング報酬です。
ステーキングには多くのメリットがあります。
まず、投資面でのメリットが挙げられます。
一般的にこれまでの仮想通貨投資では、資産の売却による利益(キャピタルゲイン)に主眼を置かれていました。
それに対し、ステーキングでは資産を保有することによって得られる継続的な収入(「インカムゲイン」や「不労所得」)が得られる点が特徴です。
2023年11月20日現在、イーサリアム(ETH)のステーキングの年利(APR)は4%ほどです。
環境面では、PoSはProof of Work(PoW)に比べて電力消費量を大幅に削減することが期待されています。イーサリアム財団は、PoSへの移行によって、PoWでの電力消費量の99.95%を削減できると試算しています。
そしてステーキングを行うことで、当該ネットワークのセキュリティの向上に貢献することができます。
しかし、バリデーターとしてステーキング行うことは、技術的かつ金銭的な負担が大きいためハードルが高いと言えます。
- ノードと呼ばれるコンピュータを設置する必要があります。
- ノードを立てた上で、それを24時間稼働させ続け、適切に管理し続ける必要があります。技術的な知識が必要である上にインフラコストもかかります。
- 仮にノードの稼働を停止させてしまうと、「スラッシング」という罰金が課されるリスクもあるのです。
- イーサリアムの場合、バリデーターとして参加するためには、最低でも「32ETH」という大量の資金が必要となります。
このようなことから、一般的なトークン保有者がステーキングを実施するためには、自分1人でステーキング(ソロステーキング)をするのではなく、取引所や代行サービスを利用するのが現実的な選択肢となります。
本稿でも取り上げるLido(ライド)は、イーサリアムステーキングの代行サービスとして有名です。
ちなみに、ステーキング銘柄の一つであるコスモス系のトークン(ATOMやCOSMO、DYDXなど)の場合、バリデーターを選んでステーキングを実施することになります。
(こちらに関しては、後日改めて詳しく説明します。)
Ledgerでステーキングを行うべき理由
Ledger Nanoはハードウェアウォレットのシリーズ名であり、ソフトウェアの「Ledger Live」と連携して使用します。
「Ledger Live」は、Ledger Nanoと繋がる唯一無二のアプリであり、Web3.0のハブを目指しているプラットフォームです。
例えるなら、iPhoneでのApp Storeのような存在です。
Ledgerでステーキングを行うということは、「Ledger Live」に対応するステーキング代行サービスでステーキングを行うことを意味します。
Lidoは、対応するサービスの一つです。
重要な点は、全ての取引はハードウェアウォレットのLedger Nanoに表示され、ユーザーによる確認と許可が必要なので、MetaMask等を使う場合と比べてセキュリティが大幅に向上することです。
Lido vs 取引所
ここでは、イーサリアム(ETH)ステーキングを行う場合を想定し、「Lidoを用いたステーキング」と「取引所を経由したステーキング」を比較します。
Lido | 取引所 | |
---|---|---|
ウォレット | 自分のウォレットを用意 | 不要 |
暗号資産の管理権限 | 自分でコントロールする | 権限を取引所に委ねる |
ステーキング中のETH | ETHと1対1で連動するstETHを受け取る | ロックアップされて動かせない |
取引所を使う場合、ユーザーは自分のウォレットを用意する必要がありません。
取引所でステーキングするということは、取引所の口座にETHを預けて代わりにステーキングを実施してもらうことを意味します。
取引所はユーザーにとって便利ではありますが、ユーザーであるあなたが暗号資産の管理に関する最終的な権限を手放すことを意味します。
「自分の暗号資産は、自分だけが管理して自分で守る」というのがクリプト(暗号資産)の大原則であり本質です。
一方のLidoでは、自分のウォレットを接続してステーキングを実施します。
Lidoが対応するソフトウェアウォレットはMetaMaskをはじめ数多く存在します。
自らウォレットを管理するということは、自ら秘密鍵を管理してステーキングを行うということです。
取引所のような便利さが無くなり、自己責任の部分は増えますが、誰の介入も受けません。
つまり、自分が自分の資産に対して完全にコントロールすることができる状態を維持できます。
さらにLidoでは、取引所経由のステーキングと異なり、ステークしたETHと1対1で連動するstETH(エスティーイーサ)という別のERC20規格のトークンを受け取ることができます。
取引所の場合、ステーキングに使うETHを他の取引目的で動かせません。(ロックアップされています)
しかしLidoを使った場合、ETHをステーキングしながらstETHを使って、別のDeFi(Curveなど)で運用することができます。
LidoとLedger Liveの相性の良さ
ここまで、取引所でステーキングするよりもLidoを使って自分のウォレットでステーキングしたほうが良い理由について話してきました。
ここからは更に話を進めて、Lidoでステーキングをするのであれば、MetaMask等のホットウォレットではなく、Ledger等のハードウェアウォレットを使ってステーキングをしたほうがよいという点について解説します。
なぜ、MetaMaskではなくLedger等のハードウェアウォレットでステーキングをした方が良いのでしょうか?
理由は、Ledger Liveを使えば、ハードウェアウォレットLedgerのセキュリティを維持したままLidoを使ってステーキングができるからです。
MetaMaskなどのソフトウェアウォレットとLedgerなどのハードウェアウォレットは、自分の資産を自分が管理するための手段(「セルフカストディ」とも言う。)という点では同じですが、ホットウォレット・コールドウォレットという違いがあるため、セキュリティのレベルが大きく異なります。
MetaMaskなどホットウォレットの場合、秘密鍵の認証情報はオンラインのPC内で保管します。
そのため、MetaMaskの入っているPCがマルウェアに感染するなどした場合、秘密鍵などの認証情報が第三者に抜かれる可能性があります。これは暗号資産を扱う者にとって大きなリスクです。
一方、Ledgerなどのコールドウォレットは秘密鍵をインターネットから切り離した物理キー内に保管するため、この重大なリスクを回避できます。
ただしハードウェアウォレットは、取引を承認する時には物理端末をUSB・Bluetooth経由でパソコンやスマホに接続する必要があります。資産を動かす度に毎回ハードウェアウォレットを操作して承認を行う必要があり、面倒だと感じる人も多いでしょう。
そのため、実務上頻繁に承認作業を行う必要がある用途では、セキュリティに目をつぶってMetaMaskを使っているというユーザも多いでしょう。
しかし、今回特筆すべきなのは、ステーキングはそもそも暗号資産の長期保有を前提としているという点です。
ひとたびステーキングを開始してしまえば、滅多に資産を動かす必要はありません。
つまり、ステーキングにおいてはセキュリティを最優先してハードウェアウォレットを使ったとしても、「不便さ」はデメリットになりません。
Ledger Liveを使ってLidoにステーキングする方法
それでは、Ledger Liveを使ってステーキングをする方法を見ていきましょう。
使い方はとてもシンプルです。
①「報酬獲得」メニューにアクセスし、「ステーキングで稼ぐ」をクリックします。
②ステーキングしたい資産(ブロックチェーン)を選択します。
現在、イーサリアム・ソラナ・テゾス・コスモス・ニアなどが対応しています。
③サービスプロバイダーを選択
イーサリアムを選んだ場合、KilnやLidoなどのステーキングサービスプロバイダーを選択できます。
ここではLidoを選択後、Ledger Live内のLidoサイトに移動し、ステーキングしたいETHの量を入力して「Submit」します。
ステーキングした資産や獲得した報酬は「報酬獲得」セクションで一箇所に集約されるので、カンタンに確認できます。
以上の通り、とても簡単な手順で少額から安全にステーキングできます。
結論
Ledger Liveを使用してLidoでステーキングを行うことは、自分の資産を完全に自己管理下に置きつつ、セキュリティを最高レベルに維持し、それでいて利便性を損なうことがない「三方よし」の選択です。
特に、Lidoのようなサービスを利用することで、ユーザーは少額の資金からステーキングに参加し、柔軟性を保ちながら報酬を得ることができます。
Ledger Liveとハードウェアウォレットの組み合わせは、資産のセキュリティを最大限に高めつつ、ユーザーが完全なコントロールを維持できる環境を提供します。
このアプローチは、クリプト(暗号資産)の本質である「分散化」と「自己管理」の精神を尊重しつつ、技術的な障壁を下げることで、より多くの人々がステーキングによってエコシステムに寄与しつつ、報酬を得ることを可能にします。
ぜひ皆さんも、Ledger Live でのステーキングにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
Ledger をまだお持ちでない方は、Ledger本社公式サイトからの購入をオススメします。
Ledger のラインナップ
・Ledger Nano S PLUS:約13,500円(ストレージ容量 大(2.5MB)/Bluetoothなし)
・Ledger Nano X:約25,500円 (ストレージ容量 大(3MB) /Bluetoothあり)
・Ledger Stax:約47,000円 (発売間近、カード型)※NFTの画像を表示できる
出展:Ledger本社公式サイト
大きく分けて3つの商品ラインナップですが、最も安価なエントリーモデル「Ledger Nano S PLUS」はUSB有線接続のみのタイプ。
Bluetooth接続機能が付いたのが「Ledger Nano X」。
間もなく発売されるカードタイプの「Ledger Stax」もあります。
どのタイプでもLedger Liveは利用できます。
本記事の作成には、Ledger日本マーケット担当の大木悠も貢献しました。
ハードウェアウォレット関連記事