【必須知識】NFT関連の法律シリーズ「金融商品取引法」
世界で急速に広まるNFT(Non-Fungible Token)市場は、デジタルアセットの新たな形態を提供し、アーティストやコレクターに新たな機会をもたらしています。
しかし、日本では金融商品取引法がNFTの販売に影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、NFTを販売する際に金融商品取引法上注意すべき点を解説します。
金融商品取引法とは
金融取引の公正を確保し、投資家を保護するための法律です。
規制される対象は2つに大別されており、有価証券(株券や国債など)とデリバティブ取引(先物取引など)に分かれます。
さらに有価証券は証券・証書と、みなし有価証券とに分かれます。
金融商品取引法 第二条一項、二項
NFTは販売手法によっては、みなし有価証券である「集団投資スキーム持分」に該当するケースがあります。
集団投資スキーム持分とは
投資者から集めた資金により事業運営や有価証券等への投資を行い、その収益を出資者に分配する仕組みのことです。
要約すると以下の4つの要件があり、すべての要件に該当するものをいいます。
- 特定の権利であり、具体的には組合契約、匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約、有限責任事業組合契約、および社団法人の社員権を指す。
- 出資者(その権利を有する者)が金銭などの出資を行って、特定の事業(出資対象事業)が行われること。
- 出資対象事業から生じる収益の配当または当該出資対象事業に関連する財産の分配を受けることができる権利であること。
- 特定の条件に該当しない権利であり、政令で定められた具体的な条件を満たさない権利が含まれます。
参考資料:集団投資スキームの定義の細目-大和総研
NFTの発行者の収益の一部がNFT購入者へ分配されると、集団投資スキーム持分に該当します。
クラウドファンディングは集団投資スキーム持分に該当するのか?
集めた資金を別の有価証券などに替えて運用する、などの使用用途では集団投資スキーム持分に該当し、金融商品取引法の規制対象になります。
逆に製品を作成したり、アニメや音楽などのコンテンツを制作したりするなど、「モノづくり」に対しては金融商品取引法が適用されません。
ただし制作物から生じた収益の一部を購入者へ分配される場合、その限りではありません。
NFTを活用したクラウドファンディングの一例として
- CryptoNinjaのアニメ制作用の「パスポートNFT」と「手裏剣NFT」
- 「LLACハウス in 瀬戸内」のクラウドファンディング
がありますが、NFT購入者(=出資者)に対して金銭的リターンはありません。
これは
要件②「その権利を有する者(出資者)が出資・拠出をした金銭(これに類するものとして政
令で定めるものを含む。)を充てて事業(出資対象事業)が行われる。」
に該当せず、集団投資スキーム持分に該当しません。
金融庁の回答事例
2023年8月25日に新事業を検討中の事業者が金融庁に対し、検討中の事業が集団投資スキーム持分に該当するかどうかの確認をし、2023年9月13日に金融庁がその回答を公表しました。
以下が新事業の内容です。
- オーナーNFTを10万円で販売
- オーナーNFTの有効期限は5年で、半年毎に1トークン(合計10トークン)の農産物NFTおよび特典を受領する権利を得る
- 1トークンあたり8千円と設定、農産物NFT保有者に相応の農産物が送られる
- 災害などで農産物が送られない場合は返金される
- オーナーNFTや農産物NFTはマーケットプレイスで販売可能
この内容に対して金融庁は「集団投資スキーム持分に該当しない」と正式回答しました。
以下が判断となる根拠です。
- 事業者の財産の分配を受けるわけではない
- 農産物が発送されない場合は農産物NFT保有者が返金を受けることができる
- 農産物NFT保有者が受け取る農産物や特典が、事業者の収益に連動するものでない
参考資料:金融庁の「新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表」
まとめ
NFT市場の成長に伴い、法律の在り方や適用について注目されています。
NFTを発行または取引する際には、専門家の助言を受けつつ、法的規制と税務処理に対する適切な措置を講じることが不可欠です。