【ブロックチェーンEXPO 特別講演】設楽 悠介氏登壇!基礎から学ぶWeb3の可能性
本記事では、「ブロックチェーンEXPO」の特別講演についてまとめます。
2023年10月26日に幕張メッセで開催されました。
登壇者は、あたらしい経済(@neweconomy_g) 編集長の設楽 悠介(@ysksdr)氏です。
幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。
同社コンテンツビジネス局で編集や新規事業を担当。
幻冬舎コミックスの取締役を兼務。
「Fukuoka Blockchain Alliance」のボードメンバーも務める。
「みんなのメンタールーム(Amazon audible)」「風呂敷畳み人ラジオ(Voicy)」「Podcast総研」等のポッドキャスト配信。
著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。
あたらしい経済 → https://www.neweconomy.jp/ / Twitter → https://twitter.com/ysksdr
- 本記事でわかること
- ・ブロックチェーンEXPOの特別講演内容
・基礎からわかるWeb3の可能性
基礎から学ぶWeb3の可能性
- 講演概要
- Web3領域でビジネスを検討する上で、必ず理解しておきたいブロックチェーンや暗号資産の仕組みを初心者にも分かりやすく解説。
また専門メディアの編集長だからこその視点で、Web3に関する事業アイデア検討方法やビジネスへの活用のヒントも紹介。
まずは、設楽氏の講演の主な内容をまとめます。
- Web3とは?
- ブロックチェーンとは?
- ビットコインとは
- 技術的な仕組み
- どのようにビットコインを生成しているのか
- ハッキングはされないのか
- ビジネス発想の上で考慮するポイント
Web3とは?
Web3とは、イーサリアムの共同設立者のギャビンウッド氏が提唱したものです。
ギャビンウッド氏は、「Web3あるいはスノーデン後のWeb」と表現しています。
「スノーデン」とはスノーデン事件のことを指しています。
2013年6月にエドワード・スノーデン氏が、米国国家安全保障局(NSA)の行っていたネット監視問題をめぐる膨大な機密情報を暴露した事件です。
スノーデン事件詳細記事:スノーデン事件で世界はどう変わったか
Web3の定義のグラデーション
Web3でビジネスをするとき、分散の度合いによって3つのグラデーションに分けることができます。
- Web3の定義のグラデーション
- ①ユーザーによるデータ主権で行われる、極めて分散性の高いブロックチェーンを使用したプラットフォームやアプリ。
②分散性のあるブロックチェーンや暗号資産を活用したプラットフォームやアプリに関するビジネス。
③分散性にかかわらず、広義の仕組みとしてのブロックチェーンや暗号資産を活用したプラットフォームやアプリに関するビジネス。
①~③の中で、①は国の規制が厳しく、なかなか実現が難しいです。
反対に③は定義が広く企業が参入しやすいため、分散性が劣ります。
企業がブロックチェーンを管理している事例もあり、「ブロックチェーンの分散性」が弱い事例があります。
十分に分散されたブロックチェーンを「パブリックチェーン」といい、企業が管理しているブロックチェーンを「プライベートチェーン」といいます。
「プライベートチェーン」は一般的に企業が管理しているため、分散性が低いです。
出典:DMMBitocoin
パブリックチェーン詳細記事:パブリックブロックチェーン
プライベートチェーン詳細記事:プライベートブロックチェーン
ブロックチェーンとは?
システムを特定の会社や個人で管理するのではなく、自由に誰もが参加して管理でき、かつ誰もが固定したリーダーにならないように設計されているデータベースやその仕組みのことを言います。
簡単に言えば「管理者がいないインターネットのようなもの」です。
ブロックチェーンは誰が作った?
ブロックチェーンは、ビットコインの基盤となる技術として注目を集めました。
結論、ブロックチェーンを作った人物は定かではありません。(2023年10月時点)
一説には、「サトシ・ナカモト」という匿名の人物でないかと言われています。
※世間一般的には「サトシ・ナカモトである」とされていますが、明確な証拠がありません。
「サトシ・ナカモト」は、2008年に論文でビットコインについて発表しました。
詳細が気になる方は、以下のリンクから論文を読むことが可能です。
ビットコインとは?
前述したとおり「サトシ・ナカモト」が、2008年に論文で発表したアイデアを基に、2009年に開発されたシステムです。
その後、しばらくはビットコインをブロックチェーンと呼ぶようになりました。
ビットコインは、取引が開始されてから一度も停止していません。
そんなビットコインはどこにあるのでしょうか?
ビットコインはどこにあるの?
世界中のPCに分散して保管されています。
たとえば、Googleのサーバーは特定のサーバーで管理しています。
ビットコインブロックチェーンは、10分ごとにひとつのブロックで構成され、中央に管理者がいません。
簡単に言い換えると「データを一定の塊で繋げるデータの保存方法」といえます。
ここでひとつの疑問点が浮かび上がります。
管理者がいないのに、ブロックを誰が繋げるの?
「ビットコインブロックチェーンのブロックを承認する第三者」によってブロックを繋げています。
中央に管理者が居ないことがビットコインブロックチェーンの特徴です。
以下の画像を見てイメージしてください。
出典:第70回:ブロックチェーンをわかりやすくおさらいしたついでにちょっとだけ Kusabi のお話
「第三者」のイメージがなんとなく掴めたかと思います。
画像だと管理している人は少なく見えますが、実際は世界中の人が分散管理しており、ノード数(ブロック数)は16,037になっています。(2023年10月29日時点)
- ノードとは
- ブロックチェーンのネットワークに参加しているコンピューター機器を指します。
技術的な仕組みについて
ビットコインはP2P方式(個人間取引)を採用しています。
技術的な仕組みについて、簡単に説明します。
- 3つの技術で構成されている
- ① P2P方式によるシステム構成
② ハッシュ値によるデータ保管
③ 公開鍵暗号方式
P2P方式によるシステム構成
P2P方式とは、サーバーを介さずに端末同士で直接データのやり取りを行う通信方式のことです。
P2P方式はイメージしやすいかと思います。
Gmailを送るときはGoogleのサーバーを経由しますが、そのサーバーを経由せずにやり取りができるイメージです。
お金で考えてみます。
海外に送金するときは手続きが多いですよね。
送金には約1週間かかります。
P2P方式であれば、ブロックチェーン上でやり取りができるので、約10分で送金可能です。(ビットコインの場合)
ハッシュ値によるデータ保管
ハッシュ値とは、不可逆的な値のことです。どんな文字列でも64桁の数字に変換されます。
原文を再現することは不可能です。つまり、ハッシュ値を公開したとしても誰も内容を調べることはできません。
公開鍵暗号方式
暗号化用の鍵(公開鍵)のみを公開できるようにし、復号用の鍵(秘密鍵)は秘匿にできる技術です。
以下の画像を見てみましょう。
出典:公開鍵暗号方式とは?初心者でもわかる公開鍵暗号方式の基礎
まとめます。
①秘密鍵を作成
②秘密鍵を使用して公開鍵を作成
③公開鍵のみを他人に教える
④他人は公開鍵にデータを入れる
⑤公開鍵に入ったデータは秘密鍵でのみ復号化可能
つまり、秘密鍵を使用しない限りデータを復元することはできません。
もう一度画像をみてください。
出典:公開鍵暗号方式とは?初心者でもわかる公開鍵暗号方式の基礎
公開鍵を取得した人が「Aさんのみ」だと分かりにくいですが、「AさんとCさん」の二人で考えてみてください。
公開鍵を取得したAさんとCさんが、文章を暗号化したとします。
そのとき、秘密鍵を所有しているのはBさんのみなので、AさんとCさんの両方の暗号化された文章を復元できるのはBさんのみです。
公開鍵→把握できれば、誰でも暗号化可能
秘密鍵→暗号化された情報を復号化可能
参考記事:公開鍵暗号方式とは?初心者でもわかる公開鍵暗号方式の基礎
なぜビットコインを生成する人がいるのか
結論、報酬が貰えるからです。
- ビットコイン報酬
- ・6.25BTC(約3100万円)
どのようにして報酬を貰うことができるのか。
「マイニング」をすることで報酬を受け取ることができます。
- マイニングとは
- ・ブロックチェーンに新しいブロックを作り出すこと
前述のとおり、ブロックチェーンは世界中の人で管理をしています。
そのブロックを生成した人が報酬を貰えます。
プルーフ・オブ・ワーク(PoW)という方式です。
参考記事:PoW(プルーフ・オブ・ワーク)
- ブロックの生成方法
- ・ハッシュ値の先頭の値を、0が15~17桁並ぶように生成した人が勝ち
イメージがしやすい参考記事を載せます。
参考記事:【完全保存版】ブロックチェーンを技術的にしっかり学ぼう!
こちらの参考記事で、実際に自分で手を動かしながら「ハッシュ値の先頭の値を0に並べる」体験ができます。
ここまでの話を理解したい人にオススメです。
個人でマイニングをするのは、かなり難しいです。以下の画像をみてください。
出典:高騰し続ける仮想通貨Bitcoinを掘る世界最大のマイニング工場に潜入、2万5000台のマシンを酷使する採掘現場の恐るべき実態に迫る
個人がマイニングする大変さが分かると思います。
最近、かなりラッキーな事例として、個人がマイニングに成功した事例があるそうです。
ほとんど無理と考えて良いと思います。
ハッキングはされないの?
ビットコインは、2009年の開発以降一度もハッキング被害に遭っていません。
なぜなら、ビットコインブロックチェーンのハッキングを行うのであれば、Google10社分くらいのマシンパワーが必要だからです。
ハッキングを仕掛けるよりも、マイニングをする側に回った方がビットコインを貰える可能性が高まります。
結果的に悪いことをしないわけです。
ただ、例に挙げたビットコインブロックチェーン以外にも、ブロックチェーンは多く存在します。
分散性が少ないと、ハッキング被害に遭うことはあります。
「ブロックチェーン=安全」ではなくて「参加者が多い=安全」であることを覚えておくことが必要です。
ビジネス発想の上で考慮するポイント
- グローバルなトレンド
- 法律などの規制
- パブリックチェーンか、プライベートチェーンか
- 既存層を狙うか新規層を狙うか
- 既存ビジネスとのバランス
大手企業であればあるほど、既存のファンがいることからビジネスを立ち上げるのが難しくなります。
記事の冒頭に記述したとおり、Web3にはグラデーションがあります。
- Web3の定義のグラデーション
- ①ユーザーによるデータ主権で行われる、極めて分散性高いブロックチェーンを使用したプラットフォームやアプリ。
②分散性のあるブロックチェーンや暗号資産を活用したプラットフォームやアプリに関するビジネス。
③分散性にかかわらず、広義の仕組みとしてのブロックチェーンや暗号資産を活用したプラットフォームやアプリに関するビジネス。
「広義の意味でのWeb3」であれば、多くの企業が参入しやすくなります。
まとめ
本記事では、設楽氏のブロックチェーンEXPOの特別講演内容をまとめました。
- まとめ
- ・Web3とは?
・ブロックチェーンとは?
・ビットコインとは
・技術的な仕組み
・どのようにビットコインを生成しているのか
・なぜビットコインを生成する人がいるのか
・ハッキングはされないのか
・ビジネス発想の上で考慮するポイント
45分という短い時間でしたが、かなり内容の濃い講演でした。
設楽氏は講演中に「本当は2~3時間かける内容」と発言しています。
ブロックチェーンについての理解がある人でも無い人でも、勉強になる講演でした。
また、今回登壇された設楽氏が編集長を務めるあたらしい経済では「Web3 Business Hub」という企業向けコミュニティを開設しました。
正式なローンチは2023年12月となっています。
詳しくは、あたらしい経済の公式サイトより詳細をご覧ください。
公式サイト:「あたらしい経済」と「KudasaiJP」が企業向けweb3コミュニティを共同運営
画像ソース:ブロックチェーンEXPO公式サイト