最近IEOを目指すプロジェクトのニュースを度々耳にします。
ただ、トークンを使った資金調達方法には「IEO」やら「ICO」やら「IDOやら」様々な種類があるため、その辺の違いが分かりにくいと感じる人も多いのではないでしょうか?
この記事ではIEOの特徴や、過去の実績、そしてこれからIEOを目指すプロジェクトについて紹介します。
IEO(Initial Exchange Offering)とは?
仮想通貨の発行体が仮想通貨取引所を介しておこなう資金調達方法できます。
■仮想通貨を発行する企業にとって
市場への上場前に仮想通貨取引所を通じて新しく発行した仮想通貨を先行販売することで、事業に必要な資金を調達できます。
■IEOに参加する投資家にとって
将来的に値上がりするかもしれない新しく発行される仮想通貨に、上場前から投資できます。
IEOとICOの違い/IEOのメリット
似た資金調達方法に「ICO(Initial Coin Offering)」があります。
ICOとは仮想通貨取引所を仲介せず、企業などが独自に仮想通貨の発行をおこなって事業資金を調達する方法です。
ICOは過去に、プロジェクトとしてはまともな実態がない仮想通貨を使って投資家から資金を集める詐欺行為も横行しました。
- IEOのメリット
- ・プロジェクトの信頼性が高い
→仮想通貨取引所がプロジェクトを審査する
・仮想通貨取引所に上場する
→市場に流通、現金化できる
・投資家にとっては参加が容易になる
→IEOが実施される仮想通貨取引所に口座を持っていれば、誰でも参加できる
これまでに実施された国内のIEOの事例
パレットトークン(PLT)/ Coincheck
パレットトークン(PLT)は、株式会社Hashpaletteが発行した仮想通貨で、エンターテインメント領域に特化したNFTプラットフォーム「Palette」の基軸通貨となっています。
2021年7月にCoincheckで国内初のIEOが実施され、1PLT=4.05円で2億3,000万枚が販売されました。
2023年11月3日時点でパレットトークンの価格は7.494円です。
FCRコイン(FCR)/GMOコイン
J2に所属するサッカークラブ、FC琉球が発行する仮想通貨で、FC琉球のサポーター・選手・クラブをつなぐコミュニティー「FC RYUKYU SOCIO」の中で使用できます。
GMOコインで2022年5月18日にIEOの抽選販売が実施されました。
1FCR=2.2円で販売し、10億円の資金調達に成功しましたが、その後暴落して現在は約0.3円です。(2023年11月時点)
暴落の原因の一つとしてGMOコインの対応が指摘されています。
上場前は最大取引数量の制限の明示はありませんでしたが、上場後に公開されたルールでは100万FCRに制限されました。大口購入者は売りたくても売れない状況の中、事前告知なく2,000万FCRに変更され、売り急ぐ投資家が殺到して価格が急落しました。
ただ、FC琉球の運営自体に落ち度があったわけではなく、販売から一年が経過した今も地道に活動を続けています。
調達した資金を活用しプラットフォームの開発・エコシステムの拡大をはじめ、J1リーグ昇格に向けたチームの強化のための投資を加速させています。
- 調達資金の使い道
- 40%:FC琉球のチーム運営、強化費・育成費
40%:FC RYUKYU SOCIOシステム開発、運用・マーケティング費
12%:FC琉球コイン発行・運用費用
8%:予備費用
これから予定されるIEO
DARトークン
収益分配に特化した「ガスゼロ」ブロックチェーン(DART’s Chain)を開発するDARTʼs株式会社がDART’s Chain内で使うユーティリティトークンとして発行しました。
開発費の調達と、トークンによる収益分配のため、IEOを通じて換価可能にすることを目的としています。
引用元:DART`s ホワイトペーパー
YAYトークン
株式会社ナナメウエが企画・開発・運営するSNS「Yay!」のガバナンストークンとして発行されます。
すでに稼働しているサービスがあり、あとからIEOを行う珍しいパターンです。
プラットフォームにはFTとして「YAY」と「EMPLE」、NFTとして「Yay! Genesis」と「Yay! Pal」が存在します。
各種トークンの役割は以下の通りです:
- YAY : ガバナンストークン、Ethereumで発行、発行上限100億枚
- EMPLE:ユーティリティトークン、Arbitrumで発行、発行上限なし
- Yay! Genesis:Yay! Palをミントする権利をもつNFT、Ethereumで発行、発行上限5000枚
- Yay! Pal:Play to EarnのためのNFT、Arbitrumで発行、発行上限なし
サービス内のトークノミクスは2種類存在します。
- マーケットプレイス型 : 利用者がPalを購入して参加します。
- プール型 : 利用者が無償でPalを取得し参加します。
参考記事:「YAY ホワイトペーパー」徹底解説、Yay!のトークノミクスが実現する「SocialFi」とは?(ナナメウエ 石濵嵩博)
まとめ:資金調達の選択肢が増える一方で購入には注意が必要
ブロックチェーンを開発する事業者にとって新たな資金調達の選択肢となる一方で、IEO後にトークンが暴落するケースも過去に見受けられたため、純粋にトークンを発行する事業者やサービスを応援したい気持ちがなく、単に「儲かりそう」という考えで素人がうかつに手を出せる領域ではありません。
株式市場では投資家は様々なルールによって保護されますが、暗号資産の世界は株式に比べると未整備な部分が多いと言わざるを得ません。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。