イーサリアム・レイヤー2のNO.1チェーン「Arbitrum」のガバナンスを世界一やさしく解説する
- 2023/8/3 17:07
- DAO
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先に公開した記事「DAOの先頭集団「Optimism」のガバナンスを世界一やさしく解説」に引き続き、イーサリアム・レイヤー2チェーン「Arbitrum」のガバナンスについて調査しました。
Arbitrumは、イーサリアムのレイヤー2チェーンの中では最大のTVL(Total Value Locked: ロックされた金額の合計)を誇っています。
Arbitrumとは?
Arbitrumは、Ethereumのトランザクションをより高速かつ低コストにするプロトコルです。開発者はArbitrumを使用して、スケーラビリティの利点を活用したユーザーフレンドリーな分散型アプリ(dApps)を構築できます。
Arbitrumの主力チェーンであるArbitrum Oneは2021年にローンチされ、これに続いて超低コストのトランザクションを目指した別のチェーンであるArbitrum Novaがローンチされました。$ARBガバナンストークンの配布により、Arbitrum OneとArbitrum Nova、およびそれらの基礎となるプロトコルのガバナンスが分散化されます。
ArbitrumとOptimismの比較
先に公開した記事で紹介した「Optimism」との違いを簡単にまとめておきます。
技術面 | ZK Rollup | Optimistic Rollup |
TVL(総ロック量) | 全レイヤー2のうち60% | 全レイヤー2のうち30% |
プロトコル(dApps数) | 多い | 少ない |
コミュニティの規模 | 大きい | 小さい |
ガバナンス | 3つのSub DAO | 二院制 |
Arbitrum DAOのビジョン
Arbitrumのガバナンスは、Arbitrum DAOと呼ばれる分散型自律組織(DAO)によって行われます。Arbitrum DAOは、Arbitrum OneとArbitrum Novaチェーン、およびそれらの基礎となるプロトコルに対する意思決定権を持つ組織です。このDAOは、Arbitrum DAOの憲法(Constitution of the Arbitrum DAO)と呼ばれる一連のルールによって統治されます。これらのルールは、DAOが自身とその技術をどのように統治するかを説明しています。
ガバナンスの仕組み
$ARBトークンとは?
$ARBは、DAOのメンバーシップを表すガバナンストークンです。トークン保有者はDAOの提案に投票することができます。Arbitrumのガバナンストークンは$ARBであり、適格なウォレットアドレスにエアドロップを通じて配布されます。
Arbitrumのガバナンス体制
Arbitrumのガバナンスは、「Arbitrum DAO」の下に、3つのSubDAOが存在するという構成になっています。
それぞれのSubDAOの役割を解説します。
Arbitrum Foundation(アービトラム財団)
Arbitrum Foundation(アービトラム財団)は、ケイマン諸島という国に登録されている企業であり、Arbitrumのルール(憲法)に従って動いています。
この財団の役割は、Arbitrumの改善提案(AIPs)を管理することです。AIPsとは、Arbitrumのシステムをより良くするための提案で、これを通じて新たな機能が追加されたり、既存のルールが変更されたりします。財団は、これらの提案がArbitrumのルールに適合しているか、また法的な問題がないかを確認します。
さらに、財団は「特別助成金」という制度を通じて、Arbitrumのエコシステムを支えるプロジェクトに資金を提供することもできます。これにより、Arbitrumのエコシステムはさらに活発になり、多様なプロジェクトが生まれます。
The Security Council
The Security Councilとは、Arbitrumの安全性を守るための組織です。12人のメンバーから成り、緊急時や日常的な運用において、Arbitrumのシステムを管理します。
例えば、Arbitrumのシステムに何か問題が発生した場合、The Security Councilは9人以上のメンバーの承認を得て、緊急措置を実行することができます。これにより、システムの安全性や利用可能性を保護します。
また、日常的な運用においても、7人以上のメンバーの承認を得て、ソフトウェアのアップグレードやメンテナンス、パラメータの調整などを行います。これにより、Arbitrumのシステムは常に最適な状態を保つことができます。
Data Availability Committee (DAC)
Data Availability Committee(DAC)は、Arbitrum Novaというシステムのデータ管理を担当しています。Arbitrum Novaは、誰でも信頼できる(AnyTrust)という特性を持つシステムで、DACがデータをオフチェーンに保存し、必要に応じて提供します。
DACのメンバーは、Arbitrumの改善提案(AIPs)によって任命または解任されます。もしメンバーが辞任した場合でも、The Security Councilが緊急措置を取り、新たなメンバーを任命することができます。
これら3つのSubDAOがしっかりと機能することで、Arbitrumは安全に運用され、ユーザーにとって便利で信頼性の高いシステムとなります。
Delegateの仕組みがある
Arbitrum DAOでは、Delegateの仕組みがあります。Delegatorは選出された代表のようなものです。$ARBトークン保有者は、自分の投票権をDelegatorに委任することができます。Delegatorは、ガバナンスに積極的に参加する時間がない多くの人々を支援します。彼らは、その人々の代わりに投票を行うことでこれを実現します。
DelegateはArbitrumの分散化の重要な要素であり、トークン保有者がArbitrumのガバナンスに受動的に参加することを可能にします。トークン保有者の投票権が無駄になることがなく、DAOの決定に反映されることになります。
まとめ
Arbitrumは、Ethereumのトランザクションを高速化し、コストを削減するプロトコルであり、そのガバナンスはArbitrum DAOによって行われます。$ARBガバナンストークンの配布により、Arbitrumのガバナンスが分散化され、ArbitrumとEthereumコミュニティ全体の利益に基づいて意思決定を行うことが可能となります。
オピニオン
ArbitrumとOptimismとで比較すると、ガバナンスを行う組織構成に違いがあることが分かりました。ArbitrumのSecurity Councilは12人から構成されるということで、分散性に疑問は残るものの、スピードが求められる意思決定や、緊急時の判断では、有効に機能するものと思われます。
ArbitrumもOptimismも、エンジニア畑の記者から見ると、性能や技術面での評価ばかりに目がいってしまいますが、DAOとしてのガバナンスの仕組みという観点も含めると、今後の技術発展や市場予測にとって有用な分析ができると感じます。
参考
A gentle introduction to the Arbitrum DAO | Arbitrum DAO – Governance docs
Governor Note: The Launch of Arbitrum Governance | Messari