イーサリアムの次期アップグレード「Dencun」とは?
イーサリアムの次期アップグレード「Dencun」が2023年末に予定されています。
2023年4月の シャペラ(Shapella)に続くアップグレードです。
この記事では次期アップグレードの詳細と、アップグレードでどのような変化があるかをまとめていきます。
「Dencun」の改善提案(EIP)紹介
イーサリアムのブロックチェーン開発者が、2023年6月8日に「Dencun」に向けて改善提案(EIP)のリストをまとめました。
「Dencun」で実装予定のEIPは複数あります。
- EIP-4844:プロト・ダンクシャーディング
- EIP-1153:トランザクションごとにリセットされる新たなオペコードの導入
- EIP-4788:イーサリアム実行レイヤーに「ビーコンチェーンブロックルート」を追加
- EIP-6780:SELFDESTRUCTオペコード(スマートコントラクトを終了させる機能)の排除
- EIP-5656 :イーサリアム仮想マシンに関連するマイナーなコード変更を導入
それぞれ解説します。
EIP-4844:大きなメリットはガス代の削減
予定されている一番大きな変更は、EIP-4844です。
これは、レイヤー2のトランザクション手数料を大幅に低下させる目的の変更です。
最大で100分の1までガス代を削減することが可能とされています。
そもそも、レイヤー2はレイヤー1のガス代を減らすための拡張ツールです。
ただ、他のブロックチェーンよりもガス代が高くなることはあります。
次期アップグレードは、このガス代問題を解決するためのものです。
イーサリアムのレイヤー2は、レイヤー1に比べてガス代が安いのは間違いありません。
主要なレイヤー2を挙げておきます。
- アービトラム(Arbitrum)
- オプティミズム(Optimism)
- ボバ(BOBA)
前提として、レイヤー2のデータはレイヤー1に転送されます。 EIP-4844は、 「レイヤー2からレイヤー1のブロックに、低コストでデータを追加する方法」 を導入する技術です。
つまりEIP-4844では、レイヤー2からレイヤー1への「専用のトランザクション」を導入する予定なわけです。このトランザクションには、大量のオフチェーンデータが含まれます。
取引の高速化とコスト削減を実現するための重要なアップグレードです。
EIP-1153:ネットワーク全体の効率を向上
一時的なデータの保存に使用されます。
トランザクションごとにリセットされる新たなコードの導入により、ストレージコストを削減可能にします。
ネットワーク全体の効率を向上させる役割があります。
EIP-4788:アルゴリズムがPoSに変わったからこそ必要な技術
イーサリアムの実行レイヤーに「ビーコンチェーンブロックルート」という新たなデータを追加します。これにより、ステーキング残高などビーコンチェーンブロックの状態に含まれる値の証明が可能となります。
ビーコンチェーンとは、PoSのことです。 2022年の9月に「マージ(The Merge)」というアップグレードがありました。
このアップグレードで、プルーフオブワーク(PoW)からプルーフオブステーク(PoS)へ移行しています。
これにより報酬を受け取れる仕組みがPoWからPoSへ変わりました。
- PoW→マイニングをするPCを多く持っている人が有利
- PoS→ステーキングをする通貨(今回はETH)を多く持っている人が有利
ステーキングで報酬が受け取れる仕組みに変更されました。
EIP-4788は、アルゴリズムがPoSに変わったからこそ必要な技術です。
理由は、ステーキング残高などの値が証明できるからです。
EIP-6780:セキュリティと効率性の向上
SELFDESTRUCTオペコード(スマートコントラクトを終了させる機能)を排除します。
セキュリティと効率性の向上に役立ちます。
EIP-5656:EVM関連のマイナーなコード変更
イーサリアム仮想マシンに関連する、マイナーなコード変更を導入します。
まとめ
Dencunアップデートの目玉はレイヤー2のトランザクション手数料を大幅に低下させるEIP-4844です。
レイヤー2チェーンのアップグレードに加えて、今回のようなレイヤー1でのアップグレードを重ねていくことで、この先も利便性の向上が期待されます。
関連記事:【ガス代が56%削減!】Optimismのアップグレード「Bedrock」を解説
イーサリアムは今後も大型アップデートを控えています。
情報が公開され次第、紹介していく予定です。