【OpenSeaは悪なのか?】OpenSeaがクリエイターフィーを任意にすると発表

NFTマーケットプレイスのOpenSea(https://opensea.io/)が、クリエイターフィーを任意にすると発表しました。
参考記事:Changes to creator fees on OpenSea|opensea.io/blog

詳細な解説は既にたくさん報道されていますので、他に譲ります。
さて、
「OpenSeaがクリエイターを裏切った」
「自社の利益しか考えないのか」
「改悪だ」
こう捉えて終わりで良いのでしょうか?

記者は、こう捉えています。

  • OpenSeaは悪ではない
  • 真にWeb3的な公共財(どのマーケットプレイスも流用できるスマートコントラクト)を提供しようとした
  • しかし他マーケットプレイス運営が健全に活用するための仕組み(ブロックチェーン的なインセンティブ設計)がなかったため、web2的に他のマーケットプレイスが自己利益を追求した
  • OpenSeaが売買するユーザーを奪われ、このままだと開発リソースもままならなくなる恐れがあるためやむなく今回の判断をした

真にWeb3的な公共財を提供しようとしたOpenSea

真にWeb3的な公共財(取引のため、どのマケプレも流用できるスマートコントラクト)とは、「Seaport Protocol」のことです。

NFTマーケットプレイスを作る上で必要な機能が網羅されています。(listやoffer, オークションなど) このコントラクトが公開されたときのブログを振り返ります。
そこには、OpenSeaの考えるWeb3的な思想が窺えます。

このプロトコルはOpenSea だけでなく、すべてのビルダー向けです。
スマートコントラクトはオープンソースであるため本質的に分散化されており、契約所有者、アップグレード可能性、またはその他の特別な特権はありません。
(中略)
OpenSeaは、Seaportプロトコルを制御または運用していません。
OpenSeaはSeaportプロトコルによって構築したマーケットプレイスのうちの一つに過ぎないのです。
そのため採用が拡大し、開発者が新しい進化するユースケースを作成するにつれて、私たちはお互いを安全に保つ責任があります。
私たちは関心のあるすべてのスマートコントラクト開発者に、セキュリティの懸念の潜在的な領域を最適化し、簡素化し、レビューする手助けをするよう要請します。

引用元:Introducing Seaport Protocol|opensea.io/blog

つまり、OpenSeaは公共財としてのスマートコントラクトを作成し、これを使う開発者を「信じて」健全に使っていこう、業界を盛り上げていこうと世に放ったのです。

Blurの台頭とSeaportの”濫用”

Blurは最初Seaportではない独自のスマートコントラクトを使い、クリエイターフィーゼロの取引を可能にしました。
OpenSeaは対抗措置として、Blurのスマートコントラクトをブラックリスト登録して取引を制限する「Operator Filter」を導入しました。
Blurはさらに対抗策としてSeaportを組み込んでブラックリストを回避し、かつクリエイターフィーはゼロにしてしまう方法を確立しました。
参考記事:OpenSeaの牙城を崩せるか? プロトレーダー向けNFT市場「Blur」の戦略とは(外部サイト)

これをやられてしまうと、OpenSeaとしてはなす術がなくなってしまいました。

オープンソースの”濫用”は仕組みで解決できないのか

Blurのある種利己的なムーブを止められなかったのは、 「オープンソースとしてのSeaportに対して開発者が敬意を払い、元々の開発者の利益を毀損しないように使うべし」というような理想が仕組みとして強制はされていないためです。
web2でのさまざまなオープンソースでも全く同様で、相当な開発リソースを割いて公開したオープンソース開発者が、相応の還元を得られていない例はたくさんあります。

オープンソースを開発した者・使う者との間にブロックチェーン的な、健全に使うことを余儀無くされるインセンティブ設計が組み込めていたら、今回のBlurはじめ他マーケットプレイスのムーブ(SeaPortをブラックリスト回避手段として使う)は抑止できたのかもしれません。

今回の件はOpenSeaが良い/悪い・Blurが良い/悪いというスケールではなく、オープンソース(広く捉えるとあらゆる公共財)へブロックチェーン的なインセンティブ設計が必要なのではないか、という問いを投げかけていると考えます。

鈴木 康男記者/エンジニア

投稿者プロフィール

2021年にWeb3に関するテクノロジーの急伸に衝撃と強い興味関心を抱き、ブロックチェーンに関するエンジニアリングを独学で学ぶ。
コミュニティやハッカソンでのプロダクト開発や、Web3に関する発信活動も行う。

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